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「競輪選手」
江崎 魚彦さん
職業インタビュー 1

競輪選手 江崎さん

江崎 魚彦(エサキ ナビコ)さん
1971年3月22日生まれ。
埼玉県 大宮競輪場所属。

現役競輪選手として、21年間活躍中。
魚彦という名前は祖父が好きな歌人「楫取魚彦」が由来。

―仕事内容について教えて下さい。

全国には競輪会場が47会場あります。
年間を通して3日間のレースに30回程参加します。選手は呼ばれたレースに参加するので、全国の競輪場を転々としながら過ごします。年間を通すと一人約90レースから100レースぐらい行います。
レース以外の日は基本的に練習です。
収入は、競輪場にてお客さまに買って頂いた車券から賞金が出てきます。


―一日の流れは?

レースがない場合はトレーニングがメインです。
レースがある場合は参加選手全員で宿舎に泊まることになります。
競輪は公営ギャンブルなので、不正防止などのため宿舎生活の3泊4日間は管理されます。
宿舎に居る間は外部との接触は一切絶たれるのでパソコンやケータイなどを使うこともできません。

一日の流れとしては朝の練習を行い、その後レースに参加する選手から順番にウォーミングアップを開始して発走します。
レース後は宿舎に戻り、休むという形ですね。


―競輪選手を目指そうと思ったきっかけを教えて下さい。

私は、中、高、大学生活と全く自転車競技とは無縁の生活でゴルフをやっていました。
元々はゴルフのプロを目指すつもりだったんです。本格的にプロゴルファーを目指すために、大学2年生の時に中退しました。
プロを目指すべくゴルフを練習しているときに、たまたま自転車の世界選手権が日本で開催されることになり観に行きました。世界選手権を見たときに、漠然とですが競輪選手もいいなという想いが浮かびました。

父が競輪好きというのもあり、競輪には子どもの頃から馴染みがあったので父に競輪選手を目指してみたいと相談したところ。父も快諾してくれて、競輪選手を目指すことになりました。

ですが、初めは何から始めれば良いかわからなく、まずは家の近くにあった立川の競輪場へ行って関係者の方々にお話しを伺いました。そこでわかったのはアマチュアになるべく、プロに弟子入りをしなければいけないということです。
競輪学校の試験を受けるにも師匠の名前が必要なので、まずは師匠探しから始めました。


―その後、日本競輪学校へ行くわけですが。厳しいと言われる入学試験について教えて下さい。

合格するまでにはとてつもない訓練が必要です。私が入学試験を受けた当時は、自転車でのタイムトライアルで1000メートルの距離を1分10秒前後で走らなければいけないという試験のみでした。これはとても難しいです。
自転車に自信がある、足の筋力に自信がある程度では出るタイムではないんですよ。一般の方が普通に走るとなると、恐らく1分40秒、50秒ぐらいはかかると思います。

私が初めて自転車に乗り1000メートル走った時も1分25秒ぐらいかかったうえに、自転車降りた瞬間に苦しくて倒れてしまいましたね。走り始めたときは、競輪場のすり鉢のバンクも全く登れなかったですし。なので、アマチュア時代は相当量の訓練をしました。私は運が良かったということもありますが、約7カ月の訓練、1回の試験で合格できたんです。これはかなり早い方だと思います。

当時は1年に2回試験があったのですが、試験合格までは5年、6年かかる人も居ましたしね。同期には試験を10回受けたという選手も居ました。アマチュア選手として試験に受かるまでアルバイトをして生活している方も居ましたね。


―何歳ぐらいから競輪学校入学を目指される方が多いですか?

多いのは高校卒業後、アマチュアになり試験を受けて入学する人です。
昔は17歳の卒業見込みから23歳までという年齢制限があったのですが、今は年齢制限がなくなったので35歳で競輪学校に合格して、37歳でデビューした方も居ます。なので、試験を受ける年齢はあまり関係ないです。
昔、アマチュアの経験があり23歳まで競輪学校に受からず別の仕事をしていたけれど、年齢制限が撤廃されたので再び挑戦するという方もいらっしゃいます。
年齢制限があった当時は23歳までに入学できず、諦めていった方もたくさん居ましたのでね。


―最近は自転車業界以外から転向する方もいると聞きますが?

競輪学校の入学試験の枠が広がっており、自転車競技をやって居なくても競輪選手になる道はあります。
アマチュアの自転車競技を行ってきた人達がタイムトライアルを行い入る技能試験、自転車未経験者が対象の自転車に対する運動能力が試される適正試験、少ない枠にはなりますが、他の競技でオリンピック出場経験がある方やスケート選手、プロ野球選手、陸上選手など他のスポーツで活躍して実績がある方が無条件で入れる特別選抜試験の3つがあります。
適性試験組、特別選抜試験組はアマチュアとしてすでに自転車に乗っている、技能試験組より3か月程早めに入校して自転車の勉強をします。技能試験組が入校してきた時に同じレベルで自転車に乗れるようにしています。


―日本競輪学校の詳しい内容を教えて下さい。

日本競輪学校に在籍するのは約10カ月間です。
在籍中は朝の点呼から、夜の点呼まで時間に追われた生活になります。
週に3日間は午前中に競輪運営の仕組み、自転車整備技術、競輪ルールなどの勉強をし、午後からは訓練です。残りの3日は終日訓練を行います。自由な日は日曜日のみとなります。

私の場合は7カ月で合格したとはいえ、75人居た同期のほとんどの方が自転車競技経験者でした。部活で自転車を行っていたという人だけではなく国体、インターハイなど輝かしい成績を残している人ばかりだったので、入学してからの苦労は大きかったですね。練習についてゆくので精一杯で、体重も12、3キロ落ちました。

しかし、厳しいだけではなく同じ目標を持つ仲間と過ごす学校生活も楽しかったです。食事などもおいしかったですしね(笑)


―訓練の内容について教えて下さい。

主に乗り込みです。1日で90キロから100キロメートル程です。
伊豆の修禅寺にある日本サイクルスポーツセンターの周回コースをひたすら回っていました。
入校して3か月は基礎訓練といって、乗り込み中心の訓練ばかりですが、4カ月目からは実際に1日2回レースを行い、競走訓練をします。
現在の競輪学校ではウエイトトレーニングも授業に取り入れていますが、当時は乗り込みが主で自主的にウエイトトレーニングする形でした。


―選手資格検定について教えて下さい。

競争試験と適性試験筆記の2種類あります。私が受けた当時は年に2回行われていました。
簡単に転んでしまわないか、ルールが把握できているか、自転車整備の知識、自転車の組み立て技術、車輪の組み立て技術、そういったものも全て含めて筆記と実技の試験を行います。
受からなかった場合、卒業することは可能ですがデビューすることはできないです。次の期で再試験を受けることになります。ただ、競輪学校を卒業した場合は、受からないような試験ではないと思います。


―75人の同期の方は全員デビューされたんですか?

無事全員、資格検定に受かりデビューできました。
過去には競輪学校を辞めた生徒も居たという話も聞いたことはありますが、やはり、10カ月間頑張ればデビューできるんだ! という強い想いがあれば競輪学校も卒業でき試験にも合格できると思います。


―デビューしてから、ずっと現役として競輪選手で過ごされてきたわけですが、その間の苦労したエピソードなどあれば教えて頂けますか?

競輪選手はランク付けがあるのですが、最高ランクはS級S班というものになります。そこからS級1班、2斑、A級1班、2斑、3班というのがあり、競輪選手としてデビューしてみんなが目指すのはS級です。

ですが、私はデビューして21年間、S級には辿りつけませんでした。そこには、ケガがあり、体の故障がありという苦労もいろいろありましたね。
日々のトレーニングも大変ですし、競輪選手というのは、やはり激しいレースが多いので転倒してしまうなども多くケガもつきものです。

一度ケガをしてしまうと取り返すのに時間がかかってしまいます。ただ、それを克服してレースで勝てた時は格段と嬉しいものです。

一昨年の落車で鎖骨を骨折した影響もあり、現在は最下級のA級3班になってしまいました。ですが、復帰後、優勝することができました。その時は大変、喜びを感じました。競輪選手はケガと克服の繰り返しですね。

あと苦労と言えば、競輪のプロのライセンスは決められた点数をとらないとはく奪されてしまうということです。
1年間を2期に分けて6カ月ごとに決まった点数をクリアしていかないといけません。1期間クリアできなかったからと言ってもはく奪されないのですが、3期間クリアできないとはく奪されてしまい、引退という形になってしまいます。

また、半年ごとに点数の低い下から35人はライセンスをはく奪されます。
プロになったからとはいえ、気は抜けません。レースで下の順位ばかり取り続けていると点数が下がるのでそういう意味では常にプレッシャーとの戦いです。

また、他のスポーツと違ってオフシーズンもないです。
オフシーズンがあれば気持ちの切り替えなどもできるのかもしれませんが。気が休まるのはケガをした時だったりもします。
辛い部分が多いですが、選手生活が長くなるにつれて精神面はどんどん強くなってゆきます。


―ケガなどで休んだ場合、再試験などはあるのですか?

1年、2年など長期で休んだ場合はもう一度1000メートルのタイムトライアルを行います。ただ、競輪学校試験のように1分10秒前後で走るという厳しいものではなく、元の走りに戻れているかという面をチェックします。


―土日など多くの方が休みの日の方がレースは多いのですよね?

土日も多いですし、お正月、GWもレースはあります。
12月30日に宿舎に入って、31日、1日、2日に行うレースなんかもあったりしますね。
ただ、レース以外の日は基本的に練習とはいえども疲れたと思えば休むこともできますし、比較的自由な時間を過ごせます。


―反対に良い面はありますか?

ゴルフをやっていたのでゴルフと比べてしまうのですが、ゴルフの場合はプロになっても生活できない、試合にも出られない、という選手もたくさんいます。
しかし、競輪選手はデビューしてしまえば毎月2本から3本のレースが必ずあるので、収入という面では他のスポーツより安定しています。プロでさえ居続ければ食べていけないということもないので。
宿舎での宿泊費、旅費などもレースの主催者側から出ます。そういった意味でも恵まれています。

 

 

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